特養生活相談員が解説！在宅酸素療法の重要性と効果とは！？

在宅酸素療法は、心不全や呼吸不全などの疾患を持ちながら自宅で生活している方々にとって、非常に重要な治療法です。この治療法を受けることで、患者さんの生活の質（QOL）は大きく向上し、さらに生命の延命にも繋がる可能性があります。今回は、在宅酸素療法の基本的な説明に加えて、効果や使用機器、注意点、そして介護施設での受け入れについて具体的なエピソードを交えて詳しく解説します。

• 在宅酸素療法とは
• 在宅酸素療法の効果
• 在宅酸素療法に必要な機器
• 在宅酸素療法の費用
• 在宅酸素療法の生活上の注意点
• 在宅酸素療法の介護施設での受け入れ
• まとめ

在宅酸素療法とは

酸素は私たちの体内のほとんどの器官が正常に機能するために欠かせないエネルギー源です。酸素は血液を通じて全身に供給され、特に肺や心臓、肝臓、腎臓などの重要な器官に栄養を届けています。しかし、呼吸不全や心不全などの疾患が進行すると、酸素供給が不十分になり、低酸素血症という状態に陥ります。

低酸素血症は、体内の酸素濃度が十分でなくなることで生じ、息切れやチアノーゼ（顔色の悪化）、意識障害といった深刻な症状を引き起こします。このまま放置すると、最悪の場合は命に関わることもあります。しかし、これらの疾患においては、根本的な治療が難しいことが多いため、酸素療法を取り入れることで症状の改善が期待できます。

Aさん（60代）は、慢性閉塞性肺疾患（COPD）を患っており、常に息切れに悩まされていました。日常的に体力が低下し、家事や買い物などが辛くなっていた彼女に対し、医師から在宅酸素療法が提案されました。当初は、酸素療法がどれほど自分の生活に役立つか信じられなかったAさんですが、実際に治療を始めてみると、息切れが大幅に軽減され、生活が一変しました。「酸素療法を始めてから、散歩ができるようになり、家事も楽にこなせるようになりました」とAさんは語っています。このように、在宅酸素療法は日常生活の質を向上させる大きな効果を持っています。

在宅酸素療法の効果

在宅酸素療法を行うことで、最も期待される効果は、酸素が不足した体内に補充されることによる息切れの改善です。特に呼吸器疾患を持つ患者さんにとって、酸素療法は呼吸を楽にし、日常的な活動が容易になるため、生活の質が大きく向上します。

さらに、記憶力や注意力の改善も期待されます。Bさん（70代）は、慢性心不全と長年戦っており、最近では物忘れや集中力の低下を感じていました。酸素供給が適切に行われるようになってからは、集中力が回復し、以前よりも物事に注意を向けることができるようになりました。「酸素を吸うことで頭がすっきりし、物忘れが減った」とBさんは驚きを隠せません。

また、酸素療法によって生活の質（QOL）が向上し、社会復帰や外出が可能になる場合があります。Aさんも酸素療法を始めてから、以前は外出するのが難しかった状況から、毎日近所の公園を散歩することができるようになりました。Bさんも以前は外出することが億劫だったものの、酸素療法を受けることで、買い物や友人との外出が楽になったと話しています。このように、酸素療法がもたらす効果は単なる身体的な改善に留まらず、精神的にも大きな影響を与えます。

在宅酸素療法に必要な機器

在宅酸素療法を行うには、専用の医療機器が必要です。これらの機器を適切に使用することで、患者さんは自宅で安全に酸素を吸入することができます。

1. 酸素濃縮器                                                                                                                 酸素濃縮器は、部屋の空気を利用して酸素を濃縮し、患者さんに供給する装置です。多くの患者さんは、この酸素濃縮器を自宅に設置して使用しています。Aさんも酸素濃縮器を使用しており、夜間も酸素が供給されるため、呼吸の負担が軽減され、安眠を得られるようになりました。この酸素濃縮器は電力を使用するため、月々1,000円程度の電気代がかかります。Aさんは最初、音が気になるのではないかと心配していましたが、実際には冷蔵庫の音程度で、ほとんど気にならなかったと話しています。
2. カニューレ・マスク                                                                                                   酸素供給を体内に送るためのカニューレ（チューブ）やマスクも必要です。カニューレは主に鼻に酸素を供給するために使われ、Bさんはこの方法で酸素療法を行っています。彼女は最初、鼻から酸素を吸うことに違和感を感じていましたが、すぐに慣れ、今では酸素を供給することが日常生活の一部として定着しました。マスクは、酸素供給が多量に必要な場合や鼻に疾患がある場合に使用されますが、ほとんどの患者さんは鼻にカニューレを装着する方法を選んでいます。
3. 携帯用酸素ボンベ・デマンドバルブ                                                                          外出時には、携帯用酸素ボンベやデマンドバルブを使用します。Aさんは、外出時に酸素ボンベを使用しており、「これがあれば、旅行にも行けるし、家の外でも酸素供給を受けることができて便利」と話しています。デマンドバルブは、呼吸に合わせて酸素を供給する装置で、必要なときにだけ酸素を供給できるため、酸素ボンベの使用時間を長くすることができます。これにより、外出時の酸素供給も非常に効率的になります。

在宅酸素療法の費用

在宅酸素療法には一定の費用がかかりますが、医療保険が適用されるため、自己負担は軽減されます。例えば、1割負担の場合は月々7,680円、3割負担の場合は月々23,040円程度の費用が発生します。これに加えて、酸素供給に必要な電気代が1,000円程度かかります。多くの患者さんは、これらの費用を高額療養費制度や医療保険を活用して軽減しています。

Aさんは初めて医療機器の費用を聞いたとき、かなりの負担だと感じましたが、ケアマネージャーからの説明を受け、高額療養費制度を利用することで、実際には予想以上に負担が軽くなったと感謝しています。また、市区町村によっては、身体障害者手帳の取得や福祉制度の利用も可能ですので、これらを活用することが勧められます。

在宅酸素療法の生活上の注意点

在宅酸素療法を受けている患者さんは、日常生活でいくつかの注意点を守ることが求められます。

• 吸入量や吸入時間を守る
  Aさんは医師から指示された吸入量や吸入時間を守り、体調が悪くても勝手に酸素吸入量を増やしたり、吸入時間を延ばしたりしないように心がけています。過剰に酸素を吸いすぎることは、呼吸の制御を狂わせる可能性があるため、指示通りに使用することが重要です。
• 火気に注意する
  酸素は物を燃えやすくする性質を持っています。Aさんは酸素吸入中にタバコを吸わないように気をつけ、またガスコンロや暖房器具から十分に距離を取るようにしています。酸素吸入中の禁煙は必須であり、火気を近づけないようにすることが最も大切です。
• 入浴時の注意
  Bさんは入浴時に酸素療法を受けながら入浴していますが、入浴時間や湯温にも工夫をしています。湯温は40度前後に設定し、長時間の入浴を避けています。また、入浴中に酸素を使い続けることが体力の消耗を抑えるためには必要不可欠です。

在宅酸素療法の介護施設での受け入れ

在宅酸素療法は、医療行為であるため、介護職員が管理することはできません。したがって、看護師が24時間常駐している施設を選ぶことが大切です。施設での酸素療法の管理は、患者さん自身や看護師が行うことになります。

Aさんの家族は、在宅酸素療法を継続するために、酸素療法に対応できる介護施設に入居することを決めました。この施設では看護師が24時間体制でサポートしてくれるため、Aさんは自宅で療法を続けるのと同じように、安心して生活を送ることができています。

まとめ

在宅酸素療法は、呼吸不全や心不全などの疾患を持つ方々にとって、日常生活を支えるための大きな治療法です。酸素療法を続けることで、息切れの改善や記憶力の向上、生活の質（QOL）の向上が期待でき、長期的な健康維持に繋がります。酸素療法を行うためには、必要な機器を適切に使い、生活上の注意を守ることが大切です。また、介護施設でのサポートを活用することで、より安全に療法を続けることができます。